4Uから見るパンクロック
前回の更新から時間が経ち、その間にも武道館ライブBD発売、新ユニットAXiSの発表、そして吉井彩美さんの引退と大きなニュースが続きました。それぞれに語りたいことがあるのですが、今回は4Uについて語りたいと思います。
4Uについては777以上に熱狂的なファンもついており、エピソードについても語られているので今更感があるのですが、お付き合いいただければ幸いです。
4Uとは
4Uはナナスタに所属する777シスターズのライバルユニットとして登場します。Episode.4Uはナナシスのストーリーの中でも屈指の名エピソードと言われており、人気のあるユニットでもあります。777のアイドルがエレクトロサウンドを中心とするアイドルソングであるのに対し、4U九条ウメ(ギター)鰐淵エモコ(ベース)佐伯ヒナ(ドラム)から成るバンドサウンドであるのが特徴です。
実はナナシスを始めた当初、この4Uの楽曲が私にはあまり“刺さり”ませんでした。というのも「これがロック?ガールズ“ポップ”バンドじゃん…」というのが素直な感想だったんです。キャンキャン娘が“ロック!!”と叫んでいる割には、音が“軽い”と感じていました。(4Uファンの皆さんごめんなさい)
その私の印象が180度変わったのが、ナナシスの2ndライブでの4Uのステージです。特に目を引いたのがギターをかき鳴らす九条ウメ役の山下まみさんのパフォーマンスでした。もちろん声優である彼女たちは実際に楽器を弾けるわけでは無いので、当て振りなのですが、まるで実際にそこにキャラクターが存在し楽器を弾いているような錯覚を受けました。
アニソンやキャラソンは聞いていましたが、実は声優さんのライブはナナシスの2ndライブが初めてで、「声優のライブなんて大した事ないだろう」というのが心の中のどこかにあったのかもしれません。そんな自分の頭をハンマーで殴られたような衝撃でした。
4Uは“本物の”ロックか?
そこで「自分にとっての“ロック”って何だろう?」と思い、4Uのエピソードを読み返しました。
4Uはセブンスシスターズに憧れていた九条ウメが、セブンスシスターズの引退をきっかけに「一瞬の幻想」であるアイドルを憎むようになり、アイドルに対抗すべく鰐淵エモコ、佐伯ヒナとともに「永遠の、本物の音楽」を目指してロックを演奏するようになります。
ここで思い出したのがブルーハーツの「パンクロック」の歌詞です。
吐き気がするだろう みんな嫌いだろう まじめに考えた まじめに考えた
僕 パンクロックが好きだ 中途半端な気持ちじゃなくて
本当に心から好きなんだ 僕 パンクロックが好きだ
友達ができた 話し合えるやつ 何から話そう 僕の好きなもの
僕パンクロックが好きだ 中途半端な気持ちじゃなくて
ああ優しいから好きなんだ 僕パンクロックが好きだ
吐き気がするほどみんな嫌いだといったウメの姿、そして話し合える友達ができたという部分でエモコ、ヒナの姿と重なります。全てに絶望した中で、自分を表現する方法として選んだのが“ロック”でした。
ブルーハーツが「パンクロック」を発表した当初、パンクが好きな愛好家からも「優しいから好きなんだ」という歌詞について反発がありました。なぜなら、当時パンクは政府や社会に対する反発を表現する音楽の側面が強かったからです*1。“怒り”を表現するパンクが“優しい”と表現するブルーハーツは“本物の”パンクでは無いとの批判が上がりました。ブルーハーツ自身も政治色・社会批判の強い歌詞を含む曲を作りますが、それよりも自己の内面を表現する音楽としての意味を強め後の「青春パンク」へとつながる潮流を作っていきます。
4Uのライブステージを見た時に、自分の中で「ロックとはこうあるべきだ」という固定観念をいつの間にか作っており、フラットに聴くことができなくなっていることに気づきました。
ナナシスでは後にロックユニットとしてThe Queen of Purple がデビューします。4Uは2018年2月に単独ライブを行っていますが、そのパンフレットの中でQoPについてこう語っています。
山下:QoPはゴリゴリのロックだからめっちゃくちゃカッコいいと思ってる。私たちはどちらかというと元気でポップなイメージだから。でもQoPが登場する前の4Uは、他のユニットから「楽器があってかっこいい」と思われていたんだよね。そこに本当にカッコいいユニットが現れて、私たちはどこにいけばいいのかと思った。かわいいにも、カッコいいにも振り切っているわけじゃないから、どういうポジションを確立していけばいいのかわからなくなって、プレッシャーがあった。
(中略)
負けないためには、もっとこうしなくちゃって意欲がわいてくるから、純粋に嬉しいなって思った。
4Uのキャストは実際に楽器を演奏していません、だからこそステージでどう見えるかについて考え、真剣に向き合っています。その姿勢にこそ“本物”を超えたロックがあるのではないでしょうか?
*1:パンクロック発表当初筆者は小学生だったため後に聞いた事です