Melody in the Pocket BD 発売に寄せて
2018年7月20日Tokyo7thシスターズのメモリアルライブ「Melody in the pocket」が開催されました。そして2019年2月20日メモリアルライブのBD・ライブCDが発売されます。雑感等をいつかまとめたいと思いつつ時間が経ってしまいましたが、BD特典としてメイキング・舞台裏映像CD特典として音楽対談がブックレットに掲載されるとの事で、発売前に書き残そうと思い筆をとりました。
開演前BGMに見るブルーハーツの影響
ナナシスの開演前のBGMはおそらく茂木監督のセレクションと思われる洋楽EDMやロックが流れるのが通例でしたが、今回のライブにおいては、はっきりとした意図をもって選曲されていました。
「いつもは特に持たせてないですけど、今回はちょっとあります(笑)。でもまぁ、気がつく人もいるかもね、くらいですよ。自分がお世話になった方たちという個人的な選曲ですけど、意味は確かにそのとおりです。最後にセブンスシスターズを持ってきてるのも、そういう意味です(笑)」『Tokyo 7th シスターズ(ナナシス)』茂木伸太郎総監督インタビュー【後編】』
いわゆるロキノン系と呼ばれるJロックを90年代から2000年代と時代を順に追っていき、セブンスシスターズの曲に繋がる演出となっていました。確かにナナシスの舞台である2034年は現在と繋がっている事が感じられ、武道館にいる観客は2034年の未来へと導かれました。
以下に開演前BGMを記します。
1.1000のバイオリン/THE BLUE HEARTS
2.TOKYO RIOT/ COBRA
3.今すぐKISS ME/LINDBERG
4.シーソーゲーム~勇敢な恋の歌/Mr. Children
6.ピストル・ディスコ/THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
7.トレイン・ロック・フェスティバル/くるり
8.グングニル/BUMP OF CHIKEN
9.Num-Ami-Dabutz/ナンバーガール
10.風吹けば恋/チャットモンチー
11.DADA/RADWIMPS
13.ONION!/ONE OK ROCK
14.PUNCH’D RANKER/セブンスシスターズ
15.Sparcle☆Time!!/セブンスシスターズ
私が入場した時には7曲目のくるりが流れており、ナンバガ、RADと続くにつれて「これってもしかして…?」と感じPUNCH’D RANKERが流れた時点で「やられた!」と思いました。
終演後にツイッターで開演前BGMのセトリを見て、1曲目がブルーハーツの1000のバイオリンだったと知り、最初から入っておくべきだったと後悔しました。というのも私は小学生だった頃からのブルーハーツのファンであるからです。
Tokyo 7th sisters Complete Music File において、茂木監督はHi-STANDERDやTHE HIGH-LOWS のコピーバンドをしていた事を名言しています。またCOBRA、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTくるり GRAPEVINE 等を聞いていたと話しています。
これまで、日本のロックバンドの影響、とりわけHi-STANDERDの影響は多く指摘されてきました。一方でブルーハーツについてはあまり触れられてきませんでした。しかし、今回のタイトル“Melody in the Pocket”また、最初の曲が1000のバイオリンであった事に大きな意味があると感じました。
1000のバイオリンは1993年に発売された「STICK OUT」からシングルカットされた曲であり、後期ブルーハーツ屈指の名曲と言われ、故深作欣二監督が「人生で最も好きな曲」として挙げている曲です。1000のバイオリンの大きな特徴として、バンドサウンドにピアノが取り入れられている事が挙げられます。ブルーハーツは基本的にはボーカル、ギター、ベース、ドラムから構成されるオーソドックスなスタイルで、この1000のバイオリンが中でも特異的な曲である事が分かります。
ここでナナシスに目を向けてみると、メインテーマであるStar☆Glitter はデジタルサウンドにピアノが重なる構成となっております。2次元アイドルと比べてみてもここまでピアノを印象的に使っているものは少なく、ピアノの音がナナシスの大きな特徴の一つであるといえます。また、777シスターズの楽曲に関しては、僕らは青空になる以降FUNBARE RUNNE、スタートライン、STAY GOLD とピアノ+バンドサウンドへと移行していきます。開演前BGMの最初に1000のバイオリンが使われたことは、ナナシスのピアノサウンドへとつながる事を感じさせるのではないでしょうか?
また、ブルーハーツにはTRAIN-TRAIN等ピアノを使った曲がありますが、その中でもなぜ1000のバイオリンが選ばれたのでしょうか?当該曲が収録されたSTICK OUTはバンド活動に窮屈さを感じていた甲本ヒロトが、ブルーハーツというバンドの在り方を見せたい、バンドを再スタートさせたいという意向のもと作ったアルバムであります。
今回のライブはレジェンドと呼ばれるセブンスシスターズが不在であり、純粋にナナスタシスターズのみのライブでありました。ナナシスの3rdライブを超え、新しい777シスターズの再出発、そして何度でも立ち上がる「スタートライン」を感じられるものとして1曲目に選ばれたと考えます。
また、歌詞について見てみると、底抜けに明るくポジティブな曲であることが分かります。
ヒマラヤほどの消しゴム一つ
楽しいことを沢山したい
ミサイルほどのペンを片手に
面白いことを沢山したい
揺り籠から墓場まで
馬鹿野郎がついて回る
1000のバイオリンが響く
道なき道をブッ飛ばす
私はこの歌詞から、まるで七咲ニコルをモデルにしているようだと感じました。
今回のタイトルMelody in the Pocketについて
Melody in the Pocketの意味について、インタビューの中で茂木監督はこう述べています。
「この言葉の意味は、小さなポケットの小さなメロディです。そしてそれはナナシスのことなんです」と。人にいろいろ言われることってありますよね? でも、それを言ってくる人も、世の中とか環境、それから他者に不平不満を漏らし続けている人も、もしかしたらポケットの中にいる本当のその人は、違う人なんじゃないかな?って思うんです。そして、人が泣くとき、感動するときって、ポケットの中にいるそいつに触れたときなんじゃないかなって。
この事「ポケットの中のメロディ」についてえふきゅう氏がTwitterでブルーハーツの「未来は僕らの手の中との」関連についてこう記しております。
ホンッッット今さらなんだけど、
— えふきゅう (@fgQji_thats) August 16, 2018
「ポケットの中のお前に用がある」
「ポケットの中に誰にも見せない人の本質がある」っていうナナシスメモリアルライブのメッセージ
これ完全にTHE BLUE HEARTSじゃなってなってるし、
だからこそ、ナナシスはそこに触れに行くんじゃなってなった pic.twitter.com/PwxG3QIB9Z
月が空にはりついてら 銀紙の星が揺れてら
誰もがポケットの中に 孤独を隠し持っている
あまりにも突然に 昨日は砕けてゆく
それならば今ここで 僕等何かを始めよう
誰もがポケットの中に本当の自分を隠しており、そのポケットの中に届くように「何かを始める」=歌う事なのではないかと思います。
このように私は、今回のMelody in the Pocketを通して多分にブルーハーツの影を見ました。
もちろんブルーハーツは1980年代後半から90年代を代表するアーティストであり、後のミュージシャンにも大きな影響を与える存在です。また、普遍的なメッセージを伝える歌詞も多い為、どこかしら似ていても不思議では無いことを追記しておきます。